科学技術時代におけるスポーツの意義
財団法人 日本学生野球協会
会長 松前 達郎
間もなく二十一世紀を迎えようとしています。これから、二十一世紀とはどのような世紀であったのか、という話題が盛んになると思われます。さまざまな意見が予想されますが、何といっても今世紀の最も目立つ特徴は、人間の活動範囲が地球的規模、及び宇宙空間にまで広がったことだろうと思います。したがって、従来の国境を一つの枠とした考え方は、現在、急速に崩壊しつつあります。この変化は、科学技術の発展によってもたらされたといえます。その影響を受けて、私たちの生活は大きく変わりました。
その身近な例として通信や交通の発展を挙げることができます。私たちは、地球上の出来事をどこにいても知ることができますし、どんな場所でも容易に行けるようになりました。また、マルチメディアの発達によって、さまざまな考え方、行動様式を知り、情報を共有できるようになりました。これからは、多様な価値観を認めながら自らの価値判断に基づいて進むべき方向を選択することが、より一層求められるようになります。
スポーツの世界に目を向けてみれば、このような社会変化が、より具体的に、よく分かります。周知のように、テレビに代表される通信技術の発展は、オリンピック競技のあり方を大きく変えました。医学の発達は、競技者の競技力向上に大きな影響を与えています。野球やサッカー、テニスなど国際的に普及しているプロスポーツ競技者の活動は、既に国境を越えています。私たちは、自宅のテレビで、アメリカの大リーグ野球やヨーロッパのサッカーリーグで活躍する日本人を応援することができます。このようなことは、つい最近まで考えられないことでした。
スポーツは、ある意味で人間にとって最も根源的な世界です。そこでは、心と身体の関係が不可欠ですし、訓練なくして技は習得できません。また、仲間の協力やルールがなければ競技が成り立ちません。したがって、科学技術の影響が強ければ強いほど、これらの根源的要素の必要性が際立ってきます。このことは、科学技術の時代に生きる私たちにとって、大変重要な意味を持っていると思います。つまり、人間が、人間らしく生きることの意味を、分かりやすく知らせる役割をスポーツは持っていると、私は思うのです。
日々野球に打ち込んでいる学生、生徒の皆さんに望むことは、このような時代ですから常に広い視野を養うことを心掛けながら白球を追い続けてもらいたい、ということです。社会におけるスポーツの意義をよく認識して、グローバルな視野を持ち、野球を通して希望ある人生を築いてほしいと切に願っております。

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